いろいろといっても、こっちも、ものすごく斬新なアイディアというのはないですから、結局、曖昧に終わる。で、サッカーは連携プレーですから、仲が悪いと試合中でも不必要なパスを出したり、肝心なところで出さなかったりということがあって、余計こじれる。ぼくもあまり面白くはなかったですね。でも、ぼくはサッカー好きなんでずっと続けました。彼もサッカーは相当好きでしたよ。ぼくは麻布を受験したときに半分サッカーの道を諦めたんです。富久も多分その節があったとは思います。麻布は強くない。だから、そんなにサッカーをやりたければどこか強いところにいけばいい、みたいな考え方の人も結構いて、だから楽しくやればいいみたいなことがあって」(平田悠悟)
こういう状況に表面的には信介は耐えていた。だが、腹の中には煮えくり返っているものを抱えていたことだろう。そして事件は起こった。ある意味では苛立ちが、少し冷静になればわかったはずの行き違いを見過ごしたともいえる。確かに信介はキャプテンと仲が悪かった。しかし、一方で、キャプテンとして駄目だが、その他に問題があるわけではないどころかいいやつだ、と他の友人に語っている。