そういうところは見習って行きたいなと思いましたね。人と違うものがある」(元ラグビー部 石津顕太郎)

 しかしそれが逆の出方をすることがあった。自分がからかわれたり、バカにされたりすることをひどく嫌がっているはずなのに、心を許した相手だと、あきれるくらい人の悪口を暴走させた。邦彦や節子に向かって友人の悪口をいうように。
「あいつの会話を聞いていて、一度だけむかついたことがある。あいつは、人をあんまり誉めないんですよね。で、教科の選択の話があって、『化学をとっているやつはバカだ』とか、そういうことばっかいってるんで、本人にはいわなかったんですけど、『別に本人が好きにやってんだからいいじゃねえか』って、ほんとに頭にきたことがあったんですよ。『あそこのジムに行くやつはバカだ』とか、そういう話ばっかして。『別にいいじゃないか』って、直接あいつにいう機会はなかったですけどね。人のことをけなすのは好きでしたよね」(石津顕太郎)

 人を誉めることは、もともと得手ではない。しかし、優しさも持ち合わせているし、ある意味では物事を多面的に見る術を心得てもいる。

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