だが、ノリやすいタイプでもあったので、不得手のはずのカラオケにも行ったことがあった。
「富久とは一回か二回カラオケに行ったことがありました。結構意外で、何で行ったのかな、ノリで行ったのかな、中学のときですけど。彼はノリだけはすごかったですよ。打ち上げとか運動会とか文化祭とかでは」(道中祐仁)
打ち上げでの信介のノリのよさは誰しもが認めるところ。大人の世界では打ち上げといえば酒がつきものだが、未成年の高校生にそれが許されるはずもない。酒を未成年者に売ったコンビニの店員が逮捕されるくらい、厳しい日本国の掟である。だからここからの話は、あくまでもフィクションである。
A高校では、合宿、文化祭、運動会など、何かにつけ行事が終わると盛大な打ち上げを催すのが恒例になっている。もちろん、高校生が金をそれほど持っているわけはないから、もっぱら「二時間、二千円で食べ放題飲み放題」という類の店を利用する。
Sはガバガバ酒を飲むが、本当は強くない。電車の中で不覚にも戻してしまったことがあった。うろたえたSは、その上にティッシュッペーパーを被せるのが精一杯だった。