第二章 小学校のヒーロー


 ある日曜日の別所小学校校庭。少年野球チームの試合が行われていたが、それでほぼ占領されるくらいのスペースである。そこには父母たちの姿もちらほら見える。邦彦と節子は、懐かしそうに校庭を見やった。ここで開かれた秋の運動会は信介の晴れ舞台だった。一年のときから六年のときまで、信介はみんなの憧れだったリレーの選手を務めた。鉢巻をしめ、颯爽と走る信介の姿がフラッシュバックのように脳裏に浮かんでいるのだろうか、邦彦はぽつんという。

「幼稚園のときもそうだったけど、場所取りが大変なんだよ。朝早くきて、場所を確保するわけ。それでみんな自分の子どもがいちばんだから、撮影のときはマナーもへったくれもない」

 南白ゆり幼稚園の運動会は、その隣にある六ッ川小学校の校庭を借りて運動会が開かれていた。このグラウンドでもその日、少年野球の試合が行われていた。
ともあれ、別所小学校の校庭には、かつて信介が使ったかもしれないサッカーのゴール、バスケットボールのリングボード、鉄棒、砂場が今もあり、隣接してプールがある。

目次
- 42 -