子どもたちも。そういう面では子どもたちにとってはほんとにわれわれのひとことひとことが重要な意味をもってくるだろうと私は見てるんです」(菅井勝)
特別コースの授業は楽しかったし、魅力的な先生たちがそろっていた。先生と生徒、生徒同士も抜群に仲がよかった。信介は親しくならなければ余り口をきかず、身体が大きく目つきも鋭いせいか、どちらかというと怖いという印象をもたれることが多かった。麻布に入ってからもそうであったが、木村洋太にとっても同じだった。
「最初はちょっと怖い、という印象が強いです。でも話すようになるといいやつで、頼りになった。よくふざけていい合ったりしていました。たとえば、ぼくの方がちょっと成績がよかったりすると、三点とか四点しか違わないんですけど、『お前はスゲーできるから』とかいって、誉め言葉もずいぶん悪口っぽくいって」
仲間とはふざけ合うが、そうでない人の前では寡黙になる。このスタイルは終生変わることがなかった。女子の特別コースに在籍していた川本芽久美、松本暁子、西川英里の三人も信介をそう捉えていた。