麻雀はいつも飲みながらだから、酔っていたとはいえ、邦彦はひたすら頭を垂れるしかなかった。だが、邦彦は自分の友人たちから信介が何かを吸収してくれればという願いも持っていたし、友人たちに自分の息子を自慢したいという気持ちもあった。
信介とその仲間たちは、サッカーの合宿先や、あろうことか学校の教室でトランプやカード麻雀に興じた。高校一年の終わり近くに入部したラグービー部の夏合宿では、麻雀をやっているのが顧問に見つかり、きつくお灸をすえられている。
実は学校では麻雀をすることが禁じられている。校則のない麻布ではあるが、禁止事項は三つだけある。麻雀のほかには、下駄を履いての登校禁止と近くのコンビニへの入店禁止である。麻雀を巡っては、負けた方が金を払うために、盗みを働いたり、親から借りたりするような事件があったからだ。コンビニへの出入り禁止は、若者が罪の意識もなく、ゲーム感覚でしでかす、万引きや悪戯が店と諍いを起こすからであり、下駄を履いて校舎を歩き回られては音がうるさくて、みんなが迷惑する。