「彼のボクシングに対する気持ちの入れようというものの表れのひとつが、インターハイに出る、高体連(注・全国高等学校体育連盟)傘下の試合に出るということにすごい情熱を燃やしていたことです。彼にしてみればプロに行くにせよ、アマチュアで続けるにせよ、ひとつの通過点としてとりあえずインターハイに出たいとか、全国選抜に出て、それなりにキャリアをもちたいということがあったと思うんです」(平戸正幹)
自宅での筋トレ
ジムでの練習だけでなく、自宅に帰ると、筋力トレーニングに励んだ。富久家には、珍しいことだが、というのはほとんどものを欲しがらなかった信介からねだられて、邦彦が通信販売で求めた、筋力トレーニング用のマシンがそろっている。肩周辺の筋肉を鍛えるためのミリタリープレス、背面の筋肉を鍛えるためのプーリーやラップルダウン、腹筋台、バーベル、アレーなどが揃えられ、サンドバック、パンチングボールもある。それらはすべてボクシングに必要な筋肉を作るためのマシンであり、ボクシングの練習マシンである。信介は常々「ボクシングに必要のない筋肉はつける必要がない」といっていた。