でも、自分の弟がそんなことじゃ、という感じはあったと思うんですね。かなりその意識は強かったと思うんですよ、昔から。ぼく自身は、兄貴にぶん殴られたというのはないけど、多少殴られたということはある、昔は。顔は殴んない。必ず手でガードしているところを殴る。生身に当たったことはない」
決して仲のいい兄弟とはいえない二人だったし、どこか醒めたところさえある兄弟関係だったが、弟が落ち込んでるのを見て、殴り方を教えるとは、武骨な信介らしい。
トレーナーとの出会い
信介は三つのジムでボクシングの基礎は身に付けていたから、大橋ジムに入ってすぐの八月下旬、初めての試合を経験する。
「高校生で真剣にやってるのは数人ですね。富久の時代も高校の試合に出ているのは富久ひとりだけだし、今年アマチュアの試合出たのも三人ぐらいですから、ほんの少数ですよ、すごい人数いるんですけど。逆に出たいといっても、実力のない人間は出さないですから、このジムから試合に出るというのは、すごく狭き門なんです」(大橋秀行)