このときセコンドについてくれたのが平戸正幹である。大橋が引き合わせてくれたこの平戸との出会いが、信介のボクシングへの情熱を支えつづけたといっても過言ではない。それ以来、平戸は信介のトレーナーとして最期まで面倒を見、すべての試合にセコンドとしてついた。

「最初は茅ヶ崎の市民大会のオープン戦ですね。大橋会長から、高校の部では何人かエントリーして、彼も出るという話を聞いていたんですが、私はそのころ彼と直接の面識がなく、そのとき会ったのが初めてです。で、基本もある程度しっかりしているし、今の状態で高校生の試合に出られるだけの実力はあると思ったんで、即座にたとえばプロテストだとかを受けさせるよりかは、高校生にはそれなりにいいボクシングの土壌がありますから、そこを生かして、次はプロに行くもよし、大学に行ってアマチュアを続けるもよし、ということで、選択の視野を少しでも広げて上げたい、という気持ちになった。それで試合が終わってから、『ジムにいつも何時ごろ来るんだ』と聞いたら、『学校終わってすぐ来るから五時半ぐらい』だというんで、『それじゃなかなか会えないから、

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