『何でだろう、何でだろう』って感じで、暗くなっちゃう。それだけに思いが伝わって来るものがありましたね。『何とか変えたいんだけど、何でできないんだろう』というか。ですから、真面目というイメージがすごくありますね。『明日やってみりゃ何とかなるだろう』といった楽観的な雰囲気というのは彼にはなかったですね。そういう点でいいますと、気持ちが硬いというかそういうところがあったような気がします。でも、ボクシングの動きそのものは硬いというイメージはありませんでした」

 平戸が徹底的に直したのは、二つある。ひとつは、ジャブ(前に出したほうの手で打つ、ストレート系のパンチ。信介の場合は左手)からワンツー(左から右につなげるコンビネーションパンチ。信介なら左でジャブを打ち込み、すぐに右ストレートを出す)への足の運び。ふたつ目は、相手のジャブをかわして左にダッキングして左で当てにいくときに左の肩を思い切り後ろに下げて打つ癖を直すこと。ダッキングはアマチュアではバッティング(減点の対象になる)を取られやすいので、やらない方がいいものの、それにしても振りが大きく、当たるタイミングがずれ、

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