信介は小学校入学以来、周りの大人たちには無口で、あまりはしゃぐことのない子どもという印象を持たれている。だが、幼稚園のときはまったく正反対だった。
「私が信介君の担任になったのは一年間、年長組のときでした。信介君はとにかく話し始めると止まらなくて、ベラベラ、ベラベラとよくしゃべるんです。それに割とひょうきんな感じでした。テレビ番組の真似をしてみたりとか、おちゃらけてみたりとか、そういうことが多かった。合田知佳ちゃんと飯塚慈美ちゃんと三人、バス停が同じだったので(注・通園バスは合田家の前に留まった)、バスの中でも犬ころのようにキャッキャいいながらよくしゃべっていて、仲がよかったですね。あまりにもうるさいので、何度か注意したことを憶えています。でも富久君は注意されても、ベンベロベーという感じで人の話を聞いていなかったり、おちゃらけたりとか、していました。でも、きつくいうと、涙がツーって感じで。すごく涙もろくて、何か嫌なことがあったり、友だちとちょっとトラブルがあると、ほんとによく涙を流して、ずいぶん感情表現豊かな子だなというふうに思いましたね」(吉村万紀子)