第三章 教師にとっては優等生



 信介の学校での成績は、体育はむろんのこと、国語、算数、理科、社会、はよくできた。「あゆみ」という通知表では、「よい」のオンパレードである。ただ、六年の一学期と三学期だけ理科が「ふつう」の評価だった。それには理由があるが、後に述べる。しかし、音楽、図画工作、五年から加わる家庭は、そのほとんどが「ふつう」だった。音楽に関しては、幼稚園のころからリズム感に難があったし、幼稚園のときトランペットを希望した以外は、自身もまったくといっていいほど関心を示さなかった。しかし少なくとも絵に関していえば、伸びやかな、子どもらしい、構図をまったく無視した魅力あるものを描いていて好感が持てる。幼稚園のときも、選ばれて、デパートに展示されたこともあったくらいだ。しかし、いずれにしろ、芸術方面といえば大げさだが、情緒に関係する科目はそれほど得意ではなかった。

何でもできる落ち着いた子


友だちといるときの信介とは違い、先生たちの目には立派な優等生と映っている。

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