一年のときの担任、堺井小百合と二年のときの担任、上田美奈子が信介をこう語る。

堺井 富久君は勉強もスポーツも万能でしたね。上田先生は、家庭科を高学年でも教えられた。

上田 六年のときです。家庭科の実習では、大きい手で針を持って、一所懸命やっていました、静かに真面目にやっていましたよ。私は初めて家庭科を一年間やったもんだから、すごく楽しかった。中学に行く前だから、弁当を作らせたりしたんですけど、揚げ物とかの材料を持って来たりしていました。でも、あれだけ何でもできるんだけど、決してわがままをいったり、人に命令したりとかいうことはなかった。きっといろんなことを考えているだろうに、あんまりいらないことはいわない。だから、私たちも一目置くような存在でしたね。

堺井 テストはいちばん早くできちゃう。で、できちゃうと、私が何にもいわなくても、教室の後ろにある本棚から学級文庫の本を取り出して、黙って静かに読んでるんです。一年生といっても、ほんとに落ち着いた感じでした。

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