ほんとみんなのことをずっと考えて行動していました、今にして思えば」(木村洋太)

 後のことだが、受験に失敗続きの仲間に激励の電話をかけたことがある。そういう優しさは備わっていた。その子は見事にS学院に合格している。
 それはさておき、遊びと勉強のバランスをとる術を、信介はいつしか体得していたと思わざるを得ない。邦彦の見方に反して。
「富久君は上手に塾の課題をきちっと処理していたと思いますよ。彼は誰も知らないところで、きちっとスッと勉強をやってたんじゃないか。逆にいえば、おれはこれだけやってるぞ、という雰囲気を決して出さずに、家でも意外と短時間にサッサッサとやってたんじゃなないかなという気がするんです。で、遊ぶこともちゃんとやってただろうし。日曜テストが終わって午後に帰ると、彼は運動か何かをしてたのか、とにかく精神的な発散をして、ある限られた時間だけきちっと勉強はやってたんじゃないかなと思うんですね。それはなんとなくわかってたんですね。塾に来て、あれだけ落ち着いているということは、どっかで精神的な発散をしてたんじゃないかと。

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