それができない子はここへきて騒ぐわけです。彼はそういうことがないんですね。といって陰にこもっているわけじゃない。ということは上手に自分のリズムをと作ってたんじゃないか、と私は思ってたんです。どうしてわかったかというと、私たちは塾の講師といえども、基本的には学校の先生と同じようにプロ意識を持っている。そのプロの目で子どもたちをみているから、わかる。で、教師というのは職人じゃなきゃいかんというのが、私の持論。職人というのは見て、わかる。私たちも子どもたちを見て、見ることでこういうのだなということがわかるような状況にならないと、教壇立つなというぐらいですね、私は」(菅井勝)

 五年生のころから自立が始まった信介を、邦彦も節子も大人として扱っていた。だから、四谷大塚で開かれる父母教室には一度も出席したことがない。この教室は日曜日ごとに開かれ、次週の学習内容を父母に説明してくれる。塾側は、親たちに子どもたちがどんな勉強をしているのかを知っていて欲しい、というだけの目的からこれを設けている。しかし現在では、それに参加した父母たちが、子どもの勉強に口出しするような事態も起こっている。

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