もうほとんど暗くなって、何灯かの照明が薄ぼんやりとグランドを照らし出す。信介の時代は高校生の練習が終わってから、やっと中学生がグランドを広く使うことができた。だからと思い、部員の一人をつかまえて聞くと「中学生は乃木坂のグランドで練習しています」との返事。練習の環境が変わったらしい。グランドでは他に、陸上部の部員たちがサッカーやアメフトの部員たちにぶつかりそうになりながら、インターバル練習を繰り返していた。
中学一年のときの練習は単調なものだった。一級上の中学二年生の部員が指導してくれたが、あまり熱心な人ではなかった。ひたすら走りまわらされた。体力をつけなければという名目ではあったが、実際は部員の振るい落としであった。あまりにも部員が多すぎて、身動きが取れないというのが実情だった。夏休みまでに部員は三十名ほどに減る。その後の練習も、毎回同じことの繰り返し、バリエーションがほとんどなかった。それでもほとんどのものがそれに耐えた。
「中学一年のときは結構真面目にやっていたと思うんですけど、走るのはぜんぜん駄目で、あまり好きじゃないみたいでした。

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