サッカーのボールとラグビーのボール、二枚の色紙の裏表にびっしりメッセージを書いてくれたよ。おれだっていつかはお前のところに行くから、必ず持って行ってお前に見せるから、待っていてくれ。待っていてくれというのも変だけど、かわいそうだけど、直ぐには行けないから。おれが必ず届けるから、みんなの気持ちとことばを。父さんも母さんも、弟の恭介だってお前の生きざまを見て来たんだから、忘れはしない。後で、ここに来てくれたみんなには父さんがちゃんとお礼しとくから、安心してくれ。みんなにお前の分まで悔いのない人生を送ってもらいたい。それにお前の非業の死をおれは決して無駄にしないから。それがおれがこれからできる唯一のことなんだよ、お前にしてやれることはもう何もないんだよ、それぐらいしか。おれもおっつけ行くから、そこに」

 斎場に「テンカウント」のゴングの響きがが流れる。信介の棺は麻布学園生、小学校の同期生四百人ほどのひとりひとりの手を経て送り出され、霊柩車に収められた。麻布学園の校歌が誰からともなく歌い出された中を。

「こんなになっちゃったよ」

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