お骨を抱いて自宅に帰ってきた邦彦は、耐えがたい寂しく苦しげな笑顔をつくって、ぽつんとそういった。
富久信介は人生を突っ走っていた。そして突然、生命を奪われた。その事態に直面し、それを事実として受け入れなければならなかった両親の心中はいかばかりか、とても余人の計り知れるところではない。
なのに、私は信介のことを一冊の本にまとめようと思った。私事ではあるが、何故そう思ったのかをここに書き記しておきたい。
私も十七歳のときに友人の死に遭った。高校三年の夏休みだった。受験勉強の気分転換に(といっても私はほとんど学校のプールで時間を過ごしていたが、他の四人は真面目に勉強していた)海に泳ぎに行こうということで、相談がまとまった。海は少し荒れていたが、遊泳禁止が出るほどではなかった。いささか泳ぎに自信のある私はかなり沖まで泳いで行った。三十分ぐらい経ったころだろうか、岸に戻ろうとしたのだが、一向に近づかない。おかしいと思いながらも、とにかく全力で泳いでみたが、岸はまだ遠い。そのうち焦りが出てきた。身体にだんだん力が入ってくる。