「いい訳しない」というのが信介の美学のひとつであったのだから。
プロになると小学校六年の卒業文集に寄せた、サッカー少年の夢は潰え去った。武神一雄は、サッカーに限らず、信介にとっては強烈な指導者がいた方がよかったかもしれないとも思っている。
「富久君が麻布に何を感じていたかに戻って考えてみたときに、多少ぬるま湯に浸かっているような学校で気に入らなかったことがあるかもしれないですね。彼なんかむしろ、彼自身が自由にやりたい半面、彼を厳しく規制して、ガチッと何かをやらせて、その分でどんどん伸ばしてくれるような、そういう指導というのをある程度期待していたかもしれない」