踊ったりしなければならなかったから、いくら潜在的に目立ちたがりであったとはいえ、幼稚園のころの七夕で、浴衣を着ることを拒んだほどの信介に、それが馴染むはずもなかった。が、突然の方向転換。それが起こったのは、信介の心の重石がひとつ取れたからである。その経緯は第八章で述べる。
「応援団は、ぼくが団長だったんですけど、基本的にエールの交換でダンスをやるんです。で、うちは可愛い系のダンスで、鈴木亜美の『ビートゥギャザー』という歌にあわせて踊ったんです、去年は。ぼくと何人かで考えた踊りだったんですけど、それを富久にもやらせて。応援団だけが踊るんですが、去年うちのクラスはほんとに仲がよくて、普通応援団は十人いれば多い方だったんですけど、うちらは二十人弱ぐらいいて。で、うちらはみんなで坊主にしようということになって、ぼくがバリカン買ってきて。で、富久は初めから坊主に近いくらい短かったんで、坊主にすることなかったんですけど。それで結構、授業中も雰囲気よかったし、楽しかった。応援団の役目はエールの交換以外にも、競技の作戦を考えたり各学年のクラスを纏めるみたいなことですね」(元ラグビー部 渡慶次道隆)