だから、妥協もあんまりしなかった」(中島哲史)

 信介は強いもの、力のあるもの、際立ったもの、に憧れを持っていた。権力というものに反発を見せることもあったが、肯定するようなこともあった。小学校四年のときに書いた自分の夢「世界征服」はまだどこか身体の中に残っていた。

「あいつは結構カーッとなるやつだったんで、強さに対する動物的な憧れみたいなのが多分あって、ボクシングやラグビーをやったのだと思います。調子にのりやすいところもあって、ぼくらの年代では誰でもそうなのかもしれませんが、引いて考えれば、冷静な考えができるやつなのに、そうではないところもありました。それは、あいつの弱いところだったかもしれません。ビックマウスというか、性格的にはぼくと正反対で、闘争心旺盛でした」(牛島正道)

 弟の恭介の見方は少し複雑である。
「結構口では世の中を知っているようなこというんですよ。『おれも官僚になりたいなあー』とか。『それで汚いことしたいな』って。

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