それともうひとつ。私はかつてより、信介がハードな生き方をしていることを邦彦から聞いていた。麻雀を一緒に打ったりすると、その身体がどれほど鍛えられているかを外見からも窺い知ることができるほどだった。古武士のような風貌を備えた信介は、どう見ても現代の若者というふうには見えなかった。
 そして葬儀の日。参席していた若者たちは紛れもなくよく街で見かける風体をしていた。厚底ブーツ、顔黒、ルーズソックス、ルーズな服装。まさに現代の若者たちである。しかし、彼らは悲しみにくれながら寒い外に立ち尽くし、最後まで帰ることはなかった。それはある意味では意外だった。ところかまわずしゃがみ込むのが彼らのやり方だと思っていたから。麻布に校歌があったとしても、誰も歌わないだろう、という予測も見事に嬉しくも裏切ってくれた。そのウエットな部分が好ましく思えた。マスコミを通じて流される若者像で彼らを知る以外、実際にこの年代の若者たちと話をしたことは皆無とまではいわないまでも、ほとんどない。だから、それとの落差に正直驚き、興味が湧いた。かけ離れているように見える信介と彼らを結び付けているものは何なのかとも思った。

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