信介には心底悪いと思うが、こういう機会でもない限り彼らとことばを交わすことはないかもしれない。そこで彼らにインタビューを申込んだ。結局、四十一名がそれに応じてくれた。
彼らは信介への思いを十全に語ってくれたが、私には、彼ら自身を語っているようにも感じられた。それだけ彼らは自分たちの信介への心情をストレートに話してくれた。それを読む方々にくみ取っていただきたいと思い、敢えてできる限り、彼らの肉声、語り口をそのまま再現した。また、文中は敬称を略させてもらった。

 なお付け加えたいのは、本書のような内容のものが世に出るということは、本来あってはならないということである。まだ社会に出ていない、まだ何もなしえていない若者の生命を奪うようなことが決してあってはならないという意味で。そのことがひとつ。さらには、残された家族や、助走だけで飛ぶ機会を奪われた若者の断腸の思いに思いをいたすならば、余りにも過酷であり過ぎるからである。
 二〇〇〇年三月八日午前九時一分、中目黒駅で起きた営団地下鉄日比谷線脱線衝突事故は、五人の尊い命を奪い、六十四人の負傷者を出した。

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