友人たちの発言に「殴られた」ということばがたびたび飛び出してくるのはそんなときだが、しかしそれはあくまでも親愛の情を示す域を出ていない。仲のよい兄弟の間での喧嘩みたいなものだ。
境野翔も信介と似たようなところがあり、負けん気が強い。お互いに張り合っていた。だからよく口喧嘩もしたし、殴られたこともたびたびある。
「中二の初めに腕相撲で負けて、そのあとちょっと筋トレやって、逆にやり返した。そのあと、ボコボコにできるまでになったんで、快感を覚えてたんです。けど、中三の騎馬戦で負けたりとかして、また筋トレするようになった。中二のころは、あいつと体格的にはたいして違わなかった」(境野翔)
お互いにじゃれあう、そのひとつの方法が信介にとっては「殴る」という行為だったように思われる。
「富久が人を殴るというのは、あんまりない。でもどっちかっていうと仲のいい友だちは殴るけど、他の人は殴らない。運動会のときの棒倒しで、富久攻めだったんですけど、『もし戦うことになって、お前たちがおれに向ってきたら、他の人よりも殴るぞ』みたいな、そういういい方をしてましたね、『逆に』みたいな」(平田悠悟)