ようになった。『最近凝っていて、いろんなところに食べにいってるんだ』と。ぼくは若いころ百貨店の営業をやってたんでよく知ってますから、神奈川県下のラーメン屋のあそこは美味しいとか、どこどこのどれが不味いとか、ぼくは適当なことをいうんだけど、彼は実践派で、行動派だから、すぐ店に行ってくる。今年の正月もぼくが遊びに来て、またラーメンの話になって、福岡に出張したときに長浜ラーメンを食べに行った話をした。すると、あいつは聞き上手で、『麺はどうだったか』とか、『スープはどうだった』とか、『どんな具が入ってたか』とか、『チャーシューはどういうものだったか』とか、そういう本格的な聞き方をしてくる。ところがこっちは美味きゃいいというだけで。それにぼくは商売柄、店が混んでいるとか、何人入れるとか、いくらだったとか、器がこんなんだったとか、そういうところに目がいくんだけど、彼は中身なんですよ。それで、三月の事故のあるちょっと前かな、ここに夜遅く来たんですよ、土曜日だったと思うんだけど。で、彼も次の日休みだから、起きていた。それで、また出張にいって、久留米の『南京千両』という九州ラーメン発祥の屋台に行ったという話しをしたら、『いいなー、行ってみてぇな』

目次
- 192 -