足りない分はお年玉などを貯めた金でやりくりしていた。どこの世界に親は小遣いをやりたがり、子どもがそれを拒否する構図があるだろうか。
それならばと、邦彦は資金を貸してやるから本を読んで勉強して株をやってみたら、と信介が関心を持つ範囲に球を投げた。株はギャンブル的な要素もある。信介は見事にはまって、結局それで儲けた。
「やつは日商岩井の株を買ったとか、いってたんですよ。そんとき高一で一緒だったやつの父親がそこに勤めてるとかどうとかいって、ちょうど下がってるときにやつは買った。『これもうすぐ跳ね上がるよ』とかいろいろしゃべっていた。ぼくは株のこととかはよくわかんなかったですから、適当に聞いてましたけど。で、結局上がって、儲けたとかいってました。あとは、エニックスの株を『一年後に五十一万にして返すから』っていって親父に五十万借りて、買ったとか聞いた。そのころちょうどゲームのドラクエというソフトが出るようなことをいってたんで、それで『絶対株は跳ね上がるから買った』っていってました」(戸金悠)
「親父さんが五十万貸してくれて、株をやっていた。それができるのは、