ラン(注・富久家の愛犬で、シーズーの雌)ともよく人格が変わったようにじゃれるんですよね。そいで高い声出して、『ランくーん、ランくーん』って。多分あいつをここまで可愛がったというのも、その反動だったと、思うんですよ」(富久恭介)

 ランは、節子が邦彦の会社を手伝っていたときに、鍵っ子になっていた小学校四年の恭介のために、両親が買い与えたものだった。動物に関心を示さない信介が、ランだけは可愛がった理由は、多分恭介のいうところにある。

 麻布の友人たちに対する攻撃が口をついて出なくなるのは、ラグビー部に入部してから後のことである。

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