いろんな人間を見るようになったから、あいつも人を受け入れるようになった。それでも何人かのサッカー部のやつとは、話しづらそうでした」
サッカー部を辞めたことは、あるいは信介の傷となっていたのかもしれない。武神一雄も村井と同じような見方をする。
「ラグビー部の連中というのは男っぽいやつが多いんですよ。ひ弱な感じのやつはむしろ鍛えられるというか。多少男っぽいやつ、自分のエネルギーをもてあましているやつ、そういうやつらがラグビー部に集中している。そこに多分ある居場所を見つけたんじゃないですか、彼は。自分と波長の合う場所があったんだ、麻布にも。そういう感じだったんだと思うんですね。麻布に馴染めなくてしばらく苦しんだ時期があって、それからある時期に解放された」
村井がいう「キチガイっぽい」ということばは、説明を要するが、信介がTKOとよんでいたトリオの一人、渡慶次道隆は、
「結局、おれらはなんだかんだいってもお坊ちゃまじゃないですか。あいつはそういう感じじゃなくて、不良とかのほうが多分気が合うんです。