けど、アマチュアの試合に出たり、プロになりたいという人は、これが最低限の練習なんです。一ラウンド三分やって、四十秒休むんです。健康のために来ている人にはそんなにやらせないですけど」(大橋秀行)
大橋ボクシングジムは、横浜駅から歩いて五分くらいのところに位置し、交通の便がいいこともあって、このジムには多くの練習生が通ってくる。ジムはお世辞にも広いとはいえず、お互いに身体をぶつけんばかりにしているが、それが実際に起きないのは、素人目には不思議に映る。その練習生たちがひしめき合う中をぬうようにして、会長である元WBC・WBA両世界ストロー級チャンピオンの大橋秀行が、温和な笑顔で一人ひとりに何かを語りかけながら、ゆっくりと回っている。
東大生ボクサーになれ
ここに信介が入会したのは、一九九八年七月二十一日であった。大橋はそのとき提出された書類を見て驚いた。
「最初は麻布高校というのでびっくりしちゃった。そのときには、辰吉丈一郎とか畑山隆則に憧れている、とかいってましたね」