車で富久家を訪れた友人は、「まるで天を見て運転しているようだ」と形容したほど。雪が積もると滑って危険なので、横浜市がすぐに除雪車を出動させるほどの急坂である。節子は下にあるコーポやマルエツに買物に行って、荷物を抱えて登るのが大変だったと、述懐する。そのこともあって、二度目の引越しをすることになるが、それは邦彦と節子が歳を取ったからである。それはさて置く。

「でも、この坂のおかげで、信介は足腰が鍛えられたかもしれない」

と、邦彦。それだけが原因ではないだろうが、事実、信介の足は小さいころから、たくましく太かった。

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