というような打診も多少はありましたけども、最初のうちは『どうするんですか』と。ただ、私が上手く説明できないときにはやっぱり、切り返してきましたね、いろいろと。でも、指導する立場、指導を受ける立場という間の取り交わしの中では、理屈っぽかったり、屁理屈をいったりとかということは、ぜんぜんなかったですね」
他のトレーナーには、生意気な口を利くこともあった。だが、信介のパーソナリティーを理解していたから、怒るということはなかった。大橋が「生意気なやつだけど、いいやつだよ」と喧伝していたからである。それに、信介は礼儀正しかった。
「富久はすごく礼儀正しかったですね。ジムに入って来るとき、シラーッと入ってくるやついっぱいいるんです、何度注意しても。でも富久は、ぼくが他の選手の面倒を見ていて、遠くの方にいても、ぼくの見えるところまで来て、挨拶して練習に入って行く。そこのところはしっかりしてましたね、いわれなくてもちゃんとやる。ですから、富久に対してはなおざりにはできない。まじめにやってるんだな、ということがあるんで」(松本好二)