周りを驚かせた喜怒哀楽の激しさ
このジムで信介は多くの厚意を受けた。そのひとつが試合のたびについてくれたセコンド。試合には必ず三人付くことが義務付けられているが、平戸の他に試合毎にジムから二人出してくれた。無償である。そうかあらずか、信介は仲間の応援に駆けつけたり、求めに応じてアドバイスを与えたりもしている。
「富久さんはひとつ上で、アマチュアのボクシングの試合に出ていたんで、そのことについて教えてもらったりとか、結構面倒見がいい人みたいな、後輩の面倒見がいい。ぼくが高校一年生のときに、彼が四月に横浜の市民戦に出たんですよ。そのときはぼくが見に行ったんですけども、富久さん一ラウンドで負けちゃった、RSCで。後で『自分の実力が出せなかった』というようなことをいってましたけど。それで、ぼくの試合も見に来てくれるっていって、八月に茅ヶ崎で試合あったんですけど、ぼくも一ラウンドで負けちゃったんですよ。そのときがぼくのアマチュアのデビュー戦です。人がいなくてほんとに心細かったんですけど、あの人が来てくれて、いくらか違いましたね。ぼくのボクシングの悪いところとか、そういうのをちゃんと見ててくれたりとかしてましたから。