小学校のときの友だちを訪ねたりしている。松本好二もロードワーク中の信介に出会ったことがある。
「ぼくは三ツ沢に住んでるんですけども、買物に行くために家を十時半ごろに出たら、、ロードワークしている富久と国道一号線のところでバッタリ会って、びっくりしたことがあります(注・三ツ沢は台地の頂上部分にあたる。その三ツ沢を挟んで、富久宅と国道一号線は対称に位置し、急坂で繋がっている)。走っていることはすごくよかったんですけど、時間が時間なので、『何でこんな時間に走ってるんだ』って聞いたら、『学校のテストで』っていわれて。亡くなるちょっと前の試合で肩を脱臼しちゃったので、練習に来てなかったんです。で、それが富久と会った最後になった。でも、怠けて走らないやつ多いんですよ、ボクサーでも。だから、富久が走っているところを見たんで、見直したというか。試合に勝とうという意識は、口だけじゃなくて、ちゃんと持ってるんだなと感じました」
平戸は信介にスタミナをつけるためのロードワークの必要性を認めながらも、大橋のいう三分間に集中させるトレーニングを重点的に指導した。