「彼は、瞬発力は結構ある方だったと思うんです。身のこなしにしても、普段はそうでもないけれども、練習すると光るものがあった。その反面スタミナというものがちょっとなかった。だからラウンドの後半ガス欠になりやすかった。もちろん彼の場合はガス欠の原因として、気持ちが前に行き過ぎて、力ばっかり入るから、ということもありましたけれども。ただそうであっても、スタミナがないということはやっぱり認めざるをえない。そういう点でスタミナの強化を図るように指導はしました。そのためには、なるべく六メートル四方のリングと近い条件のところで、たとえばラウンド開始のゴングと同時に三十秒間は相手との距離をとってシャドウする、で、三十秒から一分までの間は相手がひるんだことを想定して、手を出しっぱなしにする。そうすると三分間に三回繰り返しできるわけです。『三分三ラウンドを、一分ないしは三十秒のインターバルを入れて、ぶっとうしでやりなさい』ということは勧めました。で、確かに走ってスタミナはつきますけど、走っているときというのはどうしたって足の運動がメインになるわけですよね。

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