『今度ボクシングの試合あって、体重を減らさなきゃいけないから走ってるんだ』って。それで『頑張ってください』とかいってたんですけど。みるみるうちにあの人痩せちゃって、頬とかすげぇこけてきて、『先輩大丈夫すか』っていうと、『ああ、ぜんぜん肉とか食ってねぇからな』って。そいうことではいっぱい話はしましたけどね。一回やると決めたら通す人というか。で、試合の次の日とか、眼球真っ赤にして学校来てたりするんで、『どうしたんですか』とか聞くと、『昨日試合でさあ……』みたいな感じで。一回KO勝ちしたことがあったみたいで、その次の日とか学校中噂でしたよ。高二の先輩が『富久がKO勝ちしたんだって。強えよ、ヤバイよ』っていってましたけどね。で、『富久さんおめでとうございます』みたいな」(菅雄輝)
麻布学園は営団地下鉄広尾駅から歩いて十分ぐらいのところにあり、近くには起伏にとんだ有栖川宮記念公園があるから、ランニングの場所にはこと欠かなかった。いったんこうと決めたらやり通そうとする意志力は相当なものだったから、自分の弱点を克服するプログラムを自分で組み、自分でそれをきちんと実行した。