学校の授業は三分の二出席すれば、何の問題もなかった。

最後の試合


 これほどまでに危険で、苦しい思いをしなければならないボクシングに何故、信介はのめり込んで行ったのだろうか。
大橋はボクシングの魅力は緊張感にあるという。
「リングは真実のところという感じがします。みんなが平等なんです。学歴も育ちもなにも関係ないクリアーな世界です。世の中はどれが本当でどれが嘘か、わからないところがありますけど、リングの上ではそういうことはまったくない。まさに命を賭けたゲーム、真剣勝負ですから、そこに嘘なんか入る余地がない。そこがいいんです。ですから、すごい緊張感です。試合は、何月何日、何時から、どこで、と決まっているわけですから、ぼくは世界戦のときは正直いって、逃げ出したくなりました、すごい緊張して。でも、そんなことしたら末代まで笑いものにされると思って、恐怖というか、この緊張感を克服して、リングに上がったわけです。で、その緊張感と、勝った後の心の落差というのは本当にすごい。もう、計り知れない喜びというか、安堵感がありますね。

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