そしてそのきょうふのどん底から救ってくれたのは知らないおじさんでした。母や父もひどくお礼をして感しゃしていました。ぼくはもしひとつ間ちがえれば死んだのかと思って、その人にいま感しゃしました。そしてとてもうれしかったです。」
 両親とも縮みあがった。しかしこのときは事なきを得ている。

小さなガールフレンド


 合田一家が道をはさんだ向かいに越してきた。続いて飯塚一家も四軒隣に居を構えた。両家には信介と同じ歳の知佳と慈美という女の子がいた。この三人はいい遊び仲間であり、家族ぐるみで付き合った。
「信ちゃんと初めて会ったのは、二歳二ヶ月のときですから、うちの知佳が一歳半のときです。で、信ちゃんがチカっていえなくて、シカチャンっていってたんですよ。富久さんはお宅で仕事をしていたんですけど(注・当時、邦彦は翻訳業で生計を立てていた)、知佳はしょっちゅう入り浸って、『信ちゃんち、ミッキーマウスのビデオがあるよ』とかいったりして。ほんとによくお邪魔してたんです。

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