要するに、知佳の視線の先にはいつも信ちゃんがいるという状態で泊りがけを乗り切ったというのを、後で先生から聞いたんです。近くの公園に行くのも、スポーツクラブの行き帰りも、先生が送ってくれるときも二人いつもくっついていましたね。でも、私から見ると信ちゃんは知佳の面倒をよくみてくれたというか、男の子にしてはがさつじゃないんですよね、信ちゃん。男の子の腕白っていう印象はなかった」(合田幸江)
身体、頭脳ともに早熟であったせいか、信介は面倒見もよかった。いついかなるときも、人をからかうことがあったとしても、いじめるということはなかった。長じても本人から働きかけなくとも、信介の周りには自然と人が集まって来た。リーダーシップを取るタイプではなかったものの、身体は大きい、スポーツ万能、頭もいい、筋を通すといった、子どもにとってのヒーローの要素をすべて備えていた。そうした周りからの信頼を裏切らないためにも信介は、すでにこの時代から、同年代の子より一歩先んじなければならなかったのではなかろうか。年長組では、すでに大人びた行動を見せている。