「好きなお友だちと一緒に自由にお弁当を食べていいというときに、信介君は毎回まったく違う子と一緒に食べているんです、男女問わずに。特定の仲のいい子と一緒というよりも、いろんな子と、という感じで全方位外交ですね。あんまりべったりというんじゃなくて、浅く広くっていう、そんな感じだったと思います。そういったことでは、富久君は身体は大きいほうでしたけど、ガキ大将っていうのじゃないですね」(吉村万紀子)
負けず嫌いとアトピー
人を驚かせるどころか、あきれさせるほどの極端な負けず嫌いの性格は、終生変わることはなかったが、年長組ではこんなことがあった。
「この幼稚園の鼓笛隊には、子どものそれとしては珍しく、トランペットが加わっているんです。で、それを吹く子を六人ぐらい選ぶんですが、やりたい子は自分で手を挙げて立候補する。そうしたら、富久君も手を挙げたんです。正直いって私は、『えっ』と思いました。音楽好きっていうか、あんまり得意じゃない感じだったので、ずいぶん積極的だな、と。